薬膳における養生の意味と実践方法

薬膳の基本

「養生」という言葉、みなさんは聞いたことありますか?あまり聞き馴染みがない言葉だと思います。簡単に説明すると身体と心を整え、病気になる前に健康を守る生活法のことです。

東洋医学の考え方がベースで、食事・睡眠・運動・心の持ち方など、毎日の“ちょっとした習慣”を大切にする生き方です。

病気になる前の予防が大事

「疲れやすくなった」「肩が凝る」など、病院で診察してもらうほどではないが、身体に異常を感じる、もしくは病院に行っても具体的な病因がわからない、こういったことを体験したことがある方もおおいいのではないでしょうか。このように、病気になる一歩手前の状態のことを漢方では「未病」と呼びます。病気ではないからとそのままにしておくと、本格的に病に侵されてしまうことがあります。「未病先防」という言葉は、病気になる前にその原因となるリスクを取り去ることを指します。体が送る異常のサインに注意して普段から食生活や睡眠の状態を見直し病気を防いでいきましょう。

食・運動・睡眠・心を見直そう

普段から正しい生活習慣を心がけ、ストレスの少ない精神状態を保つことが病気にならないための予防策です。漢方では、病気にならないための食事・運動・睡眠の方法を「養生」といます。養生とは、古来伝わる健康方法のことです。身体の不調を感じた時だけでなく、日頃から離を取り入れた生活を送り、本来人がもっているパワーを最大限に引き出していきましょう。

●食事

「医食同源」という言葉があるように、健康の基本は食事です。食べたものは身体に取り入れられそれが薬になることもあれば差になることもあります。普段口にしている食事を見直して、バランスが取れた食生活を送れているか確認しましょう。

食事は和食中心にし、脂っこいもの、塩分が強すぎるもの、添加物が大量に入っているものはできるだけ避けましょう。野菜や海藻類を多めに摂り、タンパク質は肉よりも魚や大豆から摂るようにします。

●運動

運動が不足すると代謝が悪くなり、「気・血・水」の流れが滞ります。ウォーキングやストレッチなど軽めの運動でもよいので実践し、「気・血・水」の巡りをよくしましょう。腕を前後に振る、大きく回すといった方法も血行をよくするために効果的です。

●睡眠

質のよい睡眠を取ることが大切です。一日を陰陽に分けると、夜が陰、昼が陽の時間です。陰の時間である夜に深く眠っていられるよう、24時前には寝ることが養生となります。

●心

漢方には心と身体は互いに強く影響し合っているという「心身一如」という考え方があります。心と自体、どちらかのバランスが崩れるともう一方にも影響を及ぼします。ストレスから精神が不安定となり、それが元で体を崩す方がたくさんいます。適度な運動や休養でストレスを解済し、身体と心の両方を健康に保ちましょう。

また、怒りすぎたり悲しみすぎたりといった激しい感情をもつことは体調を崩す要因ともなります。平穏な心で過ごせるように心がけることも大切です。

女性の養生

女性の身体は生理(月経)によって支配されているといっても過言ではありません。生理は西洋医学でいえばホルモン、漢方でいえば「気」が重要となります。日常の生活習慣によってホルモンバランスが大きく崩れることもあるので、まずは普段の養生が大事です。

●「気」と「血」を増やし巡りをよくする

東洋医学では、両親から受け継いだ腎のひとつである腎気が盛んになることで、「天癸」」という生殖能力によって生理が起こるとされています。『気は過度な生活、睡眠不足、食事の偏りなどによって消耗します。また、「気」によって「血」は運搬されるので、「気」の消耗は血行不良にもつながるのです。冷えや瘀血によっても流れが阻害され、血行不良になります。すると生理が遅れたり、生理痛がひどくなったり、不妊になったりなどのトラブルが生じます。天癸と血行が重要です。

●生理周期に応じた養生

女性は生理周期に応じて生活スタイルを変えることにも注意が必要です。低温期は出血を促し排卵を誘発するため、血行のよくなるものを食し、行動する必要があります。高温期は子宮内膜をしっかり作ることが重要なので、血を作りやすいものを食し、身体を温めることが重要です。

●女性の更年期障

閉経前後には女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が減少し、それに伴って自律神経の働きが乱れます。こういったことが原因となって不定愁訴(ふていしゅうそ)と呼ばれる心身の変調が表れることを更年期障害と称します。火照りや発汗、手足の冷え、動悸、肩こりなど身体の変調もあれば、イライラ、不安、不眠、集中力の低下など心の変調が表れることもあります。西洋医学の観点からはホルモン療法を採用しますが、長期使用では乳がん発生のリスクが高まる恐れがあり、日本では多くの産婦人科が漢方治療を取り入れています。いずれも主に瘀血を改善する働きがあります。

●女性の養生の秘訣

①食事

  • 身体を冷やすような食べもの(生野菜、果物、ルイボスティー、など)を控える
  • 血を補う食べもの(ほうれん草、落花生、豚足、イカ、タコなど)を摂る
  • 血行をよくする食べもの(栗、羊肉、椒、唐辛子など)を摂る

②骨盤を冷えから守る
ひざ掛けより腰巻きがよいでしょう。

③適度な筋力をつける
筋肉によるポンプ作用は代謝を上げる最も手っ取り早い方法です。

男性の養生

中国では「男性は気から生まれ、女性は血から生まれる」といい、男性はその一生を「気」によって左右されます。これは、男性が外に出て身体を使うことが多く、「気」の消耗が激しくなるからです。

●「腎」と「脾」のパワーを保つ

「腎」は生殖活動にもつながる生命エネルギーを貯蔵するところです。「腎」が不足すると足腰の衰えを感じ、動作が鈍くなる、生殖能力が衰えるなどの老化が起こります。加齢により「腎」の働きが低下して人が生きていく上で必要なエネルギーである「精」の蓄えが減り、「精」が0になった時に死ぬと考えられています。なお、「腎」を補うには消化吸収し体力をつける「脾」の働きが大切です。

●男性の更年期障害

更年期障害というと女性特有の症状と思われてきましたが、近年は中高年の男性にも似たような症状が起こることが明らかになっています。男性には閉経のようなはっきりとした身体の変化が表れない上に、個人差が大きいことなどが男性更年期障害の症状を分かりにくくしています。

男性の更年期障害には加齢によるホルモン分泌の低下が影響します。男性ホルモン(テストステロン)は性機能を維持するほかストレスに対する抵抗力を有しますが、男性ホルモンの分泌量が低下していくところに仕事や家庭のストレスが加わると、更年期障害が起こりやすくなると考えられています。女性の更年期障害と同様に不定愁訴と呼ばれる心身の不調を発症し、不安感、気力の低下、不眠、全身の倦怠感などの自覚症状が表れます。

漢方では五臓の「腎」が生殖を司るとされ、その働きが衰えた「腎虚」になると、気力・精力が減退すると考えられています。養生としては「腎」の働きを強める食材を摂ること、適度な運動を毎日行うこと、ストレスをためないマイペースな生活リズムを心がけることです。

●精と天癸

人が生まれ、成長し、老いて死ぬといった変遷の中で、その成長や生殖能力について、漢方では「精」と「天癸」という考え方があります。

・精

精とは、生命体が先天的にもっている成長、発育などの生命エネルギーの基本となる物質です。精にはこの先天的に備わった「先天の精」と、飲食物によって得られた栄養物の最も精選された部分「後天の精」が絶えず補充されることによって維持されます。狭義には、精液などの「生殖の精」を指すこともあります。

・天癸

天とは、男女の生殖能力を表す指標のことです。人は生まれてすぐには生殖能力はありませんが、成長するにつれて女性には月経が起こり、男性には精通が起こります。天災は腎の力が盛んになるにつれて発生し、「肝」と「腎」の力が衰えてくると消滅します。どちらのタイミングでも陰陽のバランスが一時的に崩れ、身体に変化を起こします。天が発生する時、つまり性徴期、思春期には身体の変化に加え心もバランスを崩しがちです。そして天が消滅する時に更年期障害が起こります

まとめ

養生とは普段から正しい生活習慣を心がけ、ストレスの少ない精神状態を保つことが病気にならないための予防策のことです。今までの生活を見直し、身体の調子を整える食事・運動・睡眠・心の状態を良好にしていきましょう。女性、男性それぞれの特性を理解し、自分に合った養生をしていきましょう!