夏の養生|暑さに負けないための薬膳

季節の薬膳

夏は暑さと湿気によって気分が落ち着かず、精神的にも不安定になりがちです。

夏を快適に過ごせるよう、夏の養生法を学びましょう。

●立夏

夏の気配が感じられる頃です。夏の始まりの日です。

●小満

万物が次第に成長して、一定の大きさに達してくる頃です。

●芒種

稲や麦などの種を蒔く時期です。

●夏至

一年で最も昼が長く夜が短い日です。夏の中間点です。

●小暑

梅雨明けが近付き、暑さが本格的になります。小暑から大暑の終わりまでが暑中です。

●大暑

快晴が続き、気温が上がり続ける時期です。

生活の心得「養心防暑」

夏は春に生まれたものたちがすくすくと成長していく季節です。陽気が一年で最も盛んになり、人間の新陳代謝も活発になります。それに合わせて熱をどんどん発散させるよう、暑さに負けずに活動することが大切です。蒸し暑さでイライラしがちですが、陽気がいっぱいのこの季節は楽しく過ごすことが望ましいと漢方では考えます。気持ちを外に向けて、身体を動かし、怒ったり焦ったりしないようにしましょう。

夏に熱をうまく発散させないと、身体に熱がこもります。こもった熱は動悸や不眠を引き起こし、赤には咳が出やすくなり、冬にも体調を崩しがちになってしまうと考えられます。

夏の養生の注意点

①暑さから身を守り、水分の消耗に注意する

夏になり早くなると人は汗を多くかきますが、それによって水分の代酸が乱れて「津液」が損傷されてしまいます。津液が摂傷されると、雪や舌が渇く、大便が硬くなる、尿が黄色くなる、気分が不安定になる、けだるくなるといった症状が表れます。日射病・熱射病にかかると気を失って倒れることもあり、さらには生命の危険を生じることもあります。

②土用の頃は湿気を防ぐ

夏の土用の頃は高温で湿度も高い日か粉き、「湿邪」の侵入を受けやすくなります。「温邪」か身体の浅い部分を侵すと、関節が重い感じで動かしにくく、身体全体が疲れた感じがします。また、「湿邪」が身体の深い部分に入り込むと、消化吸収の働きをしている脾臓の活動が衰え、口が粘つく、食欲不振、お腹が張る、腸がごろごろ鳴る、といった症状が表れます。この状態が続くと、痩せ衰え精神的にも不安定になってしまいます。土用の時期は特に湿邪を防ぐように心がけなければなりません。さらに、「湿邪」と「暑邪」が結びつくと「暑湿」となりしつこい病邪となるので、夏風邪や夏バテが長引いてしまう原因となります。

③冷えにも気を付ける

夏の暑い時は長時間冷房が効いた部屋にいたり、冷たいものばかりを口にしたり、風にあたったまま寝たりして夏風邪を引きやすくなります。「風邪」が侵入すると、四肢が麻痺したり腰や膝が痛くなったりという症状を引き起こします。特に高血圧や狭心症、動脈硬化、心筋梗塞などの持病のある方が夏にこうした寒冷の刺激を受けると、血管が痙撃して血圧が上昇し、持病を再発させたり悪化させたりしてしまいます。

夏の食事の注意点

①タンパク質を補う

高温の条件下では体内で分解されるタンパク質の量が増加します。これは汗と共に排出される窒素の量が増えるためで、このような時は不定したタンパク質を補わなければなりません。魚、乳製品、豆類などに含まれる良質なタンパク質を摂るようにしましょう。

②水分と無機塩を補う

大量に汗をかいた時や暑さのため体温が上昇した時は、体内の水分が不足するだけでなく、ナトリウムやカリウムも大量に失われています。ナトリウムが不足すると重い脱水症状を引き起こすので、水分と無機塩を補充しなければなりません。水分の補充は「少量をこまめに」が原則です。一度に大量の水分を摂っても吸収されません。日本人の一日の食塩摂取量は平均10g程度と多いため、意識的に塩分摂取を増やす必要はありません。カリウムの補充も、豆類、昆布、卵などカリウムが豊富な食べものを取い入れるようにすれば十分です。

・早めに補給する

喉が渇いてから水分を補給するのでは手遅れです。限が渇いた状態の時はすでに体内の水分バランスは崩れ、細胞は脱水状態になっています。この時に水分を補給しても遅すぎるので、自覚する以前に早めの水分補給をしましょう。

・飲みすぎに注意する

水分補給が大事だからといって、一気に大量の水分を摂ることはおすすめしません。特に運助した後などは身体の各器官は休息が必要です。この時に大量の水を飲むと、消化器系や循環器系に大きな負担をかけることになります。また、この時は体内の塩分も大量に失われているので、大量の水分補給はさらに塩分を失わせ、痙攣や麻連を起こすことになります。「少量をこまめに」が原則です。

・食事中は水を飲まない

食事中に水を飲むと消化液が薄まり、消化吸収能力が弱まります。その分、胃にも負担がかかってしまいます。また、糖分を含むもの、刺激性のものなどは避け、水分補給にはお茶や水、ミネラル水を飲むようにします。

③身体を冷やす食べものを多く食べる

清熱作用のある食べものは、体内の熱を取り除き身体の中から冷やします。利湿作用のある食べものは利尿作用で水液代謝を促進させます。清熱類食物は盛夏に、利湿類食物は長夏に適した食べものといえます。スイカ、メロン、ゴーヤ、きゅうりなどが清熱・利湿作用のある食べものです。

④殺菌作用のある食べものを食べる

夏は病原菌の活動も活発になります。特に腸を侵す伝染病が多発するので、殺菌作用のある食べものをできるだけ多く食べて予防を心がけましょう。ニンニク、玉ねぎ、ニラ、ネギなどには各種細菌に対する殺菌作用や活動抑制作用があります。

⑤滋養を心がける

夏は人体の陽気が盛んになるので、陰の力が弱まります。陰を補う滋養食を多く食べるようにしましょう。たとえば、朝食や夕食にお粥を食べると体内の水分が補充され暑気を払う効果があります。小豆粥は腎臓の働きを助けて水腫を取り除き、血行をよくして精神を落ち着かせる効果があります。ハスの実粥は消化を促進し、精神を安定させ、下痢・不眠などにも効果があります。

夏におすすめの食材

●旬の食材

スイカ、冬瓜、ゴーヤ、きゅうりなど。

夏が旬の食材には利尿作用があるので、体内に余分な水分がたまった時に効果的です。身体にこもった熱も一緒に放出してくれて、喉や口の渇きも抑えられます。

●殺菌作用のあるもの

ネギ、しそ、ミョウガ、ワサビなど

湿気を取り、夏の冷えに効果的です。消化促進効果もあります。冷奴やそうめんなどの冷たい料理に薬味として使える食材です。

●酸味があるもの

梅干し、夏みかん、酢など

酸味がある食材は収れん作用があり、汗の出すぎを抑えてくれます。酢には抗菌作用もあるので、食中毒の防止にも効果的です。

●「脾」の働きを強めるもの

トウモロコシ、じゃがいも、かぼちゃ、枝豆、豆腐など

夏バテの食欲不振には、消化吸収をよくするために「脾」を助ける食材を使いましょう。

まとめ

夏は一年の中で最も陽のエネルギーが強くなる季節です。体内に熱がこもりやすく汗も多くなるため、気と水分が消耗しやすくなります。暑さによる疲れやほてり、不眠、だるさは、心の負担や水分不足から起こりやすくなります。また、強い冷房、冷たい飲み物の取すぎはかえって胃腸を弱らせ夏バテの原因になります。十分な睡眠、適度な運動、適度な塩分補給など、夏の暑さに負けない身体を作りましょう!