秋の養生|身体と心を整える薬膳

季節の薬膳

陽気が落ち着き始め、だんだん陰気が増えてくる季節が秋です。

それに合わせて、それまで外に向けていた気持ちを内へと切り替えていきましょう。

●立秋

残暑が厳しいですが、秋の気配が少しずつ感じられる頃です。秋の始まりの日です。

●処暑

暑さが峠を越え、朝夕の涼しさも感じられるようになります。

●白露

夜間の気温が低くなり、草木に露が降り始める頃です。

●秋分

秋の彼岸の中日です。昼と夜の長さがほぼ同じで、この日を境に徐々に昼が短くなります。

●寒露

露が冷気によって凍りそうになる頃です。朝晩は肌に寒気を感じるようになります。

●霜降

夜間の冷え込みが厳しくなり、霜が降り始める頃です。

生活の心得「養陰防燥」

秋は夏に成長した植物が実を結び、やがては枯れていく時です。暑さが少しづつ和らいで、爽やかで通ごしやすい気候となります。それにつれて、私たちの身体も夏に消耗した体力を回復して、生理機能もだんだん安定してきます。極端な発汗が少なくなってくるので、体内の「気・血・水」のバランスも向上し、消化機能も安定してきます。

さらに、夏の間は照りつける太陽のように陽気が盛んですが、秋には陽気が減っていく一方で陰気が増えていく時期なので、身体の陰の「気」を養うことが重要です。秋は夏に消耗したものを十分に補充し、しっかりと養生を心がけて冬への準備をします。

秋の養生の注意点

①乾燥を防ぐ

秋になると気温が下がり始め、雨も少なくなって湿度が低くなり空気が乾燥してきます。五行説では秋は「肺」に対応しており、乾燥した気候は「肺」を損傷させやすいと考えられます。乾燥した空気が入り込むと、口や喉が渇き、咳が出るなどの呼吸器系のトラブルが起こりやすくなります。また、「肺」は皮膚の表面に潤いを与え、大腸の働きにも影響を与えるとされています。したがって、「肺」の働きが弱まると皮膚が乾燥し、便が乾燥して便私がちになります。そのため、秋の養生は乾燥を防ぐことが重要です。

②冷えに注意する

夏の間は汗によって体内の水分が排出されるため、季節が秋に移った頃には水分が不足している状態といえます。この時に冷気に侵されると、頭痛・鼻づまり・胃痛・関節痛などの症状が表れやすくなりままた、慢性病の再発や新たな病気を誘発することもあります。元々身体が弱い方はこうした気候の変化への適応能力や抵抗力が弱いので、冷えには十分注意が必要です。

③基礎体力を養う

古来、四季の規律を表す「春生、夏長、秋収、冬蔵」という言葉がありますが、秋は人体にとっても収穫の季節で、体力を養う重要な時期といえます。気候は涼しくなり、身体の陽気が少しづつ減っていきます。朝晩と日中の温度差が大きくなるので、気候の変化に対応した生活を心がけます。関節痛や高圧、心臓疾患のある方は、身体を冷やさないようにして病気の再発を防ぐよう心がけなければなりません。 子どもやお年寄り、慢性病などで体力が衰えている方も注意が必要です。

④急に厚着にしない

朝夕の冷え込みを感じ始める時ですが、あまり早く厚着をすると体内に熱を発生させて汗もかくので体内の「水」を損傷させ、陽気も排出してしまいます。少し寒いくらいの刺激は大脳の働きを活発にして皮膚の血流量を増加させます。皮膚の代謝がよくなれば寒さへの抵抗力も強まり、免疫力もアップするので、徐々に寒さに慣れていくことが大切です。秋は天気が激しく変わるので、汗をかきすぎないように気を付けて、こまめに衣服の調整をするとよいでしょう。

⑤マッサージで肌を刺激する

肌を刺激することは肌と関係の深い「肺」の働きを強化し、空気が乾燥してくるこの季節に起こりがちな呼吸器系のトラブルを未然に防いでくれます。風邪の予防として昔から乾布摩擦が行われていますが、適度な肌への刺激は自律神経のバランスを整えるので有効な方法です。肌を直接こすらなくても、服の上からでもよいでしょう。あまり強く肌をこすりすぎると肌を傷つけてしまうので注意します。

また、アロマオイルを使ったマッサージなどは摩擦による過度の刺激を防ぐメリットがあるほか、アロマによる効能も期待できるので、積極的に取り入れましょう。

秋の食事の注意点

①「肺」の働きを助ける

五行説では、秋は「肺」に対応しています。秋の乾燥した気候は「肺」の「気」を損ないやすく、鼻の乾き、喉の痛み、咳、胸の痛みといった呼吸器系の病気が発生しやすくなります。秋は肺の働きを助ける飲食を心がけましょう。体内の「気」を養い、潤いを与える食べものは、白きくらげ、梨、ごま、ハス、ほうれん草などです。

②少辛多酸

秋は「肺:の活動が活発になる時です。五行説では「金剋木」の法則があるので、五蔵にあてはめると「金」→「肺」、「木」→「肝」となります。すなわち「肺」が活発すぎると肝の働きを損なうことになります。ネギ、生姜、唐辛子など辛い食物は「肺」の働きを活性化するので、食べすきないように注意しましょう。また、酸味のあるもの、りんごやブドウ、トマトなどは肝の働きを助けるので、できるだけ多く食べるとよいでしょう。

③朝はお粥を食べる

初秋の頃は夏の暑さや湿気の名残があります。この頃には多くの果物が実をつけるので、ついつい食べすぎてしまい。「脾・腎」の消化収集機能を損ないがちです。朝はお粥を食べて「脾・腎」の働きを整えれば、一日爽快に過ごせるでしょう。

④滋養スープを中心に

秋の飲食は「養陰防燥」が原則です。昼食や夕食には滋養効果のあるスープを食べるようにするとよいでしょう。

秋におすすめの食材

●旬の食材

秋刀魚、鯖、山芋など

秋が旬の食材には消化吸収を助ける働きをもつものがあります。夏の疲れを取り、「気」を養うのに効果的です。

●酸味と甘味があるもの

梨、ブドウ、ザクロ、柿など

水分をたっぷり含み、酸味、甘味のある旬の果物は体内の乾燥を防いでくれます。ただし、梨と柿は身体を冷やす効果があるので食べすぎには注意しましょう。

●肺の働きを強めるもの

白ごま、白きくらげ、銀杏、れんこん、ユリ根など

色の白い食材は肺の働きを助けます。ただし、銀杏は一度に食べすぎないように注意しましょう。

●腸の働きを整えるもの

栗、さつまいも、里芋など

腸の働きを整え、便秘を改善します。腸の働きがよくなると肌のトラブルが解消されます。

まとめ

秋は「乾燥」と「冷え」が同時に進む季節です。東洋医学では肺が弱まりやすい時期とされ、呼吸器、肌、鼻、喉などに不調が出やすくなります。また、夏の疲れが残っていると、秋に一気に体調が崩れやすいのも特徴です。梨やれんこんなど秋が旬の食材を取り入れ、十分な睡眠と適度な運動を行い乾燥と冷えに負けない身体を作りましょう!